大判例

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東京地方裁判所 昭和24年(ワ)3006号 判決

原告 荒川民主商工会

被告 荒川税務署

一、主  文

本件訴はこれを却下する。

訴訟費用は原告の負担とする。

二、事  実

原告訴訟代理人は「笹本甲松作成名義の別紙回答文と題する文書は昭和二十三年十一月二十五日荒川区不当課税反対人民大会の代表者の示した別紙要求書に対し当時被告の直税課長であつた訴外笹本甲松が職務上作成した公文書であることを確認する。訴訟費用は被告の負担とする」との判決を求め、その請求の原因として、右文書は昭和二十三年十一月二十五日荒川区不当課税反対人民大会代表者の示した別紙要求書に対し、当時被告の直税課長であつた訴外笹本甲松が職務上作成した公文書である。しかして同文書は原告の所員が所轄荒川税務署から所得税等の査定を受ける際に、仮更正決定の誤謬を正し、または、新調査により適正課税を受けるよう折衝するに当り折衝の方針と態度を具体的に決定しその折衝を秩序正しく整然と行いながら、逐次折衝の方針と協定を一致させるについてその根拠を與えるものであるが、被告はその成立を否認するから、ここに被告に対し前記文書が公文書として眞正に成立したものであることの確認を求めるため本訴に及んだ次第であると陳述し、なお、原告は適正課税同盟荒川支部を改組したものであると補述した。(立証省略)

被告指定代理人は原告の請求を棄却するとの判決を求め、答弁として、原告の主張事実中、訴外笹本甲松が昭和二十三年十一月二十五日当時被告の直税課長であつたことは認めるが、その他の事実は否認する。

(一)書面の眞否確定の訴はその目的たる書面が法律関係を証するものであり、その眞正確定によつて原告の法律上の地位の不安が除去され得る場合に限つて許されるものであるが、原告主張の書面は單なる事実関係を記載するに過ぎず、その眞正なることが確定せられても、原告は法律上何等の利益も受けることはない。(二)仮に本訴に確認の利益があるとしても、(イ)税務署は国家公務員たる税務署員がその職務を行う場所で当事者能力を有するものではない。(ロ)行政廳が当事者となり得るのは訴願または行政処分の取消変更を求める行政訴訟に限られ、国の利害に関するその他の訴訟で当事者となるのは国であるから、原告が税務署を被告としているのは当事者を過つたものである。これを要するに、原告の本訴請求は以上何れの点からしても失当であると述べた。

(立証省略)

三、理  由

書面の眞否確定の訴はその目的たる書面が法律関係を証するものであると同時に、その眞正確定が原告の法律上有利な地位の主張に役立つ場合に限つて許される特殊の訴であるから、本訴はこの要件を具備するものであるか否かについて按ずるに、原告主張の書面がその主張のように別紙要求書記載の事項に対する回答として認められたものである以上、その記載内容は、(一)荒川税務署長に対する団体交渉は法文化しては認められないが署長は課税に当り随時適正課税同盟と懇談して参考資料を聞く、(二)審査請求の調査完了までは延納を認め、実質的、技術的に加算税、延滯金等を徴收しないように努める、(三)荒川税務署員が昭和二十三年十月修正申告に対し無理に捺印させたことを納税者において立証し得たときは、その者に対し右申告を取消して再審査を行う、(四)昭和二十三年度十月仮更正決定はその一部に誤謬があつたことを認めるということに帰着し、右書面は結局において荒川税務署長は国の課税及び徴收について成るべく納税者の利益になるように措置すべきこと及び昭和二十三年度分の国税についての仮更正決定の一部に誤謬のあつたことを認める趣旨を記載した書面と解して差支えないが、元來、国の課税及びその徴收に関する事項は各種の税法で規定せられ、税務官廳と納税者との合意でこれを左右することを許さないものであり税務署長が納税者に利益になるように措置するといい、更正決定に誤謬のあることを認めるといつても、署長は嚴として存する法律の規定に反する措置をし、誤謬訂正の新方法を創設し得るものではないとともに公務員が法律の許す範囲内で国民の利益となる措置をすべきことは憲法第十五條第二項が公務員を全体の奉仕者とすることに徴して明白であるから、本件書面は原告若しくはその会員の法律上の地位に何等の影響も與えるものではないといわなければならない。

果してしからば、本件書面の眞正なることの確定が原告若しくはその会員の法律上有利な地位の主張に役立つことを前提とする原告の本訴は爾余の判断をするまでもなく不適法であることが明瞭であるから、これを却下すべきものとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第九十五條、第八十九條の規定を適用して主文の通り判決する。

(裁判官 田中盈)

回答文

一、団体交渉は、法文化しては認められないが、随時同盟と懇談し参考資料を聞く。

二、第五條については、要求の趣旨に添うよう実質的、技術的にやつて行く。

三、第六條については、無理に捺印させた事を立証出來た者に対しては、取り下げて再審査を行う。

四、十月仮更正決定に一部誤謬があつた事を認める。 以上

昭和二十三年十一月二十五日

荒川税務署

直税課長 笹本甲松

適正課税同盟 御中

要求書

今回の所得税仮更正決定に当り当局は課税の基本的原則と税法を無視し、我々の民主的申告と業況の実態を蹂躙し、目標額の天下り割当と非科学的官僚的査定による不当課税を強行してきた、この爲我々の営業と生活は無惨にも破壞され、轉廃業と生活苦は目前に迫つてきた。茲に於て我々は生活権を守るため当局の不当極る課税に断固反対し適正課税の即時実施を左の如く要求する。

一、更正決定した課税の基礎資料、及び目標額を公開せよ。

二、審査請求を出した者の十月仮更正決定を破棄し担税力に應じた適正課税の即時実施。

三、労働者及び中小商工業者代表者と当局とを以て構成する適正課税査定委員会を設置し、課税の適正と均衡を計れ。

四、適正課税同盟と当局との団体交渉を認め審査に当つて同盟の意見資料を充分に尊重し威嚇的調査を止めよ。

五、審査請求の調査完了迄は延滯を認め加算税延滯金等は徴收するな。

六、無理に捺印させた十月修正申告を取消し再審査請求を認めよ。

七、インフレ、病気、その他の事由により担税力喪失した者の税金を免除せよ。

八、勤労所得税の撤廃と取引高税の天下り割当反対。

九、税務職員の生活を保証せよ。

一九四八年十一月二十五日

荒川区不当課税反対人民大会

適正課税同盟荒川支部

東京財務局長

湯地謹爾郎殿

荒川税務署長

谷川武雄殿

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